一本の視線が、画面を横切る。ためらいながら、あるいは一気に。その軌跡が、やがて作品になる。
ここに並ぶのは、「目」がとらえた世界です。声にならない「好き」が、線になった瞬間です。
視線入力アート
作者は、医療的ケア児・者のみなさん(匿名)。視線入力訓練アプリ「EyeMoT(アイモット)」や、視線入力装置「Hiru(ヒル)」を用いて制作されました。視線の速さやためらいが、そのまま色と線になっています。















アートブック ― 軌跡を、一冊に
視線入力の療育の中で生まれた線や色は、長いあいだデータとして積み重なっていました。あるとき、その軌跡を丁寧に抽出し、鑑賞に堪える作品として仕上げようという試みが始まりました。
医療的ケア児・者とスタッフが重ねた日々、視線入力アプリの開発者の志、デザイナーの技と想い、そして清水芸術基金の助成――多くの力が連なって、一冊のアートブックが完成しました。完成したアートブックは、病院・支援学校・図書館など各地へ寄贈されています。

アートカレンダー ― 作品が、社会へひらかれる
アートブックを目にしたリコークリエイティブサービス株式会社が、作品の可能性に注目しました。「医療的ケア児・者を、もっと多くの人に知ってほしい」という思いから、リコーグループ向けに販売するカレンダーの一商品として、視線入力アートを採用しました。販売による収益の一部はあいの実に還元され、今後の活動を支える糧となります。
視線入力アートと技術
EyeMoT(アイモット)― 伊藤史人先生
伊藤史人先生(岩手県立大学ソフトウェア情報学部 講師)は、福祉工学とヒューマンインタフェースを軸に、支援ICTの研究開発に取り組んでいます。その研究室が開発した視線入力訓練アプリ『EyeMoT(アイモット)』は、療育の中で楽しみながら視線を動かす力を育てるアプリです。「あいのきせき」の作品の多くは、EyeMoTを用いて制作されました。
EyeMoTは、伊藤先生が長年にわたり開発し、無償で提供してこられたアプリです。このページに掲載している作品の多くは、EyeMoTを使って制作されました。利用者が視線で絵を描く時間は、先生のお仕事に支えられています。
本作品は、視線入力訓練アプリEyeMoT(岩手県立大学 伊藤史人研究室)を使用して制作しました。
EyeMoTについて詳しくは、伊藤先生のサイト「ポランの広場」をご覧ください。

Hiru(ヒル)と専用お絵かきアプリ ― 株式会社GEAR
「Hiru(ヒル)」は、iPad に対応した視線入力装置(スペインの IRISBOND 社製)です。本プロジェクトでは、パソコンを使う構成に加えて、「iPad × Hiru」の組み合わせも試しています。どちらかが新しく、どちらかが古いというものではありません。それぞれに向く場面があり、選択肢が2つあるということです。
ただし、視線だけで「線を引く」「色を選ぶ」といった繊細な操作を実現するには、専用のアプリが欠かせません。そこで、アプリ研究開発のパートナーである株式会社GEARが、Hiru と iPad を連携させ、視線で直感的に描ける専用のお絵かき(ペイント)アプリの開発を進めています。現在はテスト配信の段階で、App Store での公開には至っておりません。視線で線をなめらかに引き続ける(ドラッグ)という難しい操作を可能にし、医療的ケア児・者がのびのびと自分を表現できるキャンバスを実現しています。
ともにつくった人々
- 株式会社GEAR ― iPad対応視線入力装置「Hiru」と連携する専用お絵かきアプリの研究開発
- バンビグラフィックス 阿部守健 ― アートブック・アートカレンダーのデザイン
- 清水芸術基金 ― アートブック作成の助成
- リコークリエイティブサービス株式会社 ― アートカレンダーの商品化
視線が描く線には、ためらいと挑戦、喜び、誰かへの想いが宿っています。どうか、その軌跡を受け取ってください。
訂正について
2026年9月、本ページの記述を一部改めました。従来、パソコンを使う構成とiPadを使う構成を「重い/軽い」「これまで/これから」という形で書き分けておりました。しかし両者は新旧の関係ではなく、それぞれに向く場面がある選択肢です。誤解を招く書き方であったため、表現を改めました。あわせて、専用アプリの開発状況を現状(テスト配信の段階)に合わせて記載しております。